世界冬の都市市長会(WWCAM)

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第13回ヌーク市長会議

 

グリーンランドから世界に熱いメッセージ~温暖化問題への新たな挑戦

~第13回世界冬の都市市長会議でヌーク宣言を採択~

 第13回世界冬の都市市長会が2008年1月18日から20日までの日程で、グリーンランドの首都ヌーク市で開催されました。
 「北極圏における気候変動」をメインテーマとした今回の会議では、8ヵ国22都市の市長、代表者が参加し、地球温暖化について活発な議論を繰り広げ、3日間に渡りグリーンランド全体が熱気に包まれました。
 会議最終日には、全会一致で「ヌーク宣言」を採択し、成功裏のうちに会議の幕が降りました。

 

ヌーク市長から~会議を振り返って~

 市長会議が成功裏に終わり、およそ1ヶ月半が過ぎました。この会議は私にとって、そしてヌーク市にとって初めての経験でした。また、私たちが皆、とても長い間開催を待ちわびた会議でもありました。
 会議テーマ「北極圏における気候変動は、時代を反映したものでした。ここグリーンランドでは、気候変動の影響が深刻です。氷河融解を目の当たりにし、漁業や狩猟を営む者にとっては既に生活水準の維持が困難なほど影響を受けております。ヌークは美しいゴッドホープフィヨルドや冠雪した山々、水辺だけではなく、ヌークの人々との出会いだけでもとても価値がある場所です。グリーンランドは温かいホスピタリティー精神でよく知られています。地元の人々は冬の都市の皆様に会うことをとても楽しみにしていました。
 今回の会議はこの上ないほど感動的な経験だったと信じています。会員の皆様がヌーク宣言の採択により負うこととなった責務を果たされることを切に願っております。私たち首長は環境をもっと大事にしていくために引き続き協力し、全力を捧げていくべきだと思います。私はヌーク宣言の趣旨に沿って、問題に取り組んでいけることを心より嬉しく思っております。
2008年3月
ヌーク市長ニコライ・ヘインリッチ

開会式で挨拶をするニコライ・ヘインリッチ・ヌーク市長

開会式で挨拶をするニコライ・ヘインリッチ・ヌーク市長

 

グリーンランド・ヌーク市ってどんなところ?

 グリーンランドは、およそ8割は雪と氷に覆われ、最も氷が厚いところでは3kmにもおよびフィヨルドでも有名です。人口は約60,000人です。
 ヌーク市はグリーンランド南西部の海岸に面し、およそ250年の歴史を持つ首都です。

人口:約15,400人(2008年1月1日現在)
平均気温:8℃(7月)、-8℃(1月) 

グリーンランド・ヌーク市参考写真 グリーンランド・ヌーク市参考写真

 

会議参加都市(11都市)

中国

長春市、ハルビン市、ジャムス市、鶏西市、瀋陽市

グリーンランド

ヌーク市

日本

札幌市

韓国

太白市

リトアニア

カウナス市

ノルウェー

トロムソ市

アメリカ

アンカレッジ市

 

非会員都市(11都市)

デンマーク

オールボー市

グリーンランド

アシアート市、イトコルトルミット市、イヒドゥート市、ナノルタリーク市、パーミュート市、カコトック市、シシミュート市、ウペルナビク市、ウマナック市

ノルウェー

ハンメルフェスト

 

会議に参加した会員都市市長

会議に参加した会員都市市長

 

会員都市以外からも多数の自治体職員が参加した

会員都市以外からも多数の自治体職員が参加した

 

市長会議

 「北極圏における気候変動」をテーマに、温暖化対策について意見交換しました。地球温暖化は国際社会での緊急の問題であることから、各都市とも大変高い意識の下で取組を進めており、ユニークな活動や先進的な事業の報告が相次ぎました。

 

会議の様子

会議の様子

 

青少年とともに取り組む地球温暖化対策

 温暖化対策には住民一人ひとりの協力が欠かせません。特に次代を担う青少年の協力を得ることは、地球の未来を考える上で大切なことであり、青少年とともに取り組む温暖化対策について報告がありました。
 トロムソ市(ノルウェー)からは、青少年をターゲットにした国際短編映画際「ノルディックユース映画祭」が紹介されました。
 映画祭の2007年の作品テーマは「地球温暖化」であり、ユーモアのある映像が参加者の関心を引いていました。映画製作を通じて、若者に温暖化問題への認識を高めてもらう目的が伺えました。
 アンカレッジ市(アメリカ)からは、「環境活動のためのアラスカ青少年グループ」の活動が報告されました。学校での啓発活動や省エネ運動に取り組むなど、若者が率先して行動することの大切さが強調されていました。
 札幌市(日本)からは、子どもたちに対して環境問題の大切さを教える事業として、学校給食における「フードリサイクル」の取組が報告されました。
最後に議長を務めたヌーク市長から、「地球の未来は青少年のものであり、青少年の未来を確保するのが我々の責務である」という力強いまとめがありました。

 

映画祭を紹介するDVDが上映された(写真はジャケット表紙)

映画祭を紹介するDVDが上映された(写真はジャケット表紙)

 

スザンヌ・フリーク・グリーン氏(アンカレッジ市)

スザンヌ・フリーク・グリーン氏(アンカレッジ市)

 

フードリサイクルとは?

 札幌市が2006年から始めた取組で、学校給食の残飯を堆肥化して肥料として農家へ供給し、この肥料から生育した食物を学校給食の材料として利用する循環のことです。これは子供たちに対する環境教育としても非常に効果的なものとなっています。

フードリサイクルイメージ写真

 

冬の都市とエネルギー問題

 積雪寒冷という気候の特徴をもつ冬の都市では、暖房や除雪など冬の間に消費されるエネルギー量は大変大きく、自ら温暖化を進めているという自己矛盾を抱えていると言えます。そこで、省エネルギーの推進や新エネルギーの活用などエネルギー問題に取り組む都市からの報告がありました。
 札幌市(日本)からは、貯蔵した雪を冷熱エネルギーとして活用し、都心部商業ビルに対する熱供給事業に利用している事例の報告がありました。豪雪による除雪問題に悩まされる札幌市民にとって雪は「邪魔者」と思われていましたが、発想の転換により、雪をエネルギーとして市民生活に役立てている事例に他都市から質問や関心が多く寄せられました。
 アンカレッジ市(アメリカ)からは、省エネルギーを目的に、街路灯をエネルギー効率の高い「LED」に替えている事例が紹介されました。LEDを街路灯に使用することに伴い、ある程度の初期投資は必要なものの、省エネ効果によるランニングコストの軽減により、全体として大きな負担にはならないことが強調されていました。

 

マーク・ベギチ・アンカレッジ市長による事例発表

マーク・ベギチ・アンカレッジ市長による事例発表

 

LEDについて教えて!

 Light Emitting Diodeの頭文字をとったもので、「発光ダイオード」ともいいます。近年開発された技術で、従来の蛍光灯などと比較して電力の消費量も少なく、放熱量も抑えられることから、CO2の削減に大きく貢献するものとしてますます期待されています。

 

ヌーク宣言の採択

 市長会議の最終日に採択されたヌーク宣言では、温暖化の影響が目に見えやすいのは我々冬の都市であり、地域住民に最も身近な行政機構の立場として、取組みの必要性を世界に発信し訴えていくことを力強く宣言しました。ヌーク宣言をきっかけに、冬の都市の輪が大きく広がることが期待されます。

 

ヌーク宣言

 地球規模の気候変動問題は人類にとって最も深刻な脅威の一つであることは論を待たない。気候変動の急速な増加が人類の産業及び工業活動に起因していることについては、世界中の科学者たちによって既に指摘されている。2007年11月に発表されたIPCC「気候変動に関する政府間パネル」の報告書では、世界の温室効果ガス排出量は今後二、三十年増加し続け、その結果、21世紀には20世紀に観測されたものより大規模な温暖化がもたらされると予想されている。

 地域住民にとって温暖化の影響が目に見えやすいのは、我々冬を抱える都市であり、そして、最も深刻な影響が発生しているのがグリーンランドおよび北極圏である。冬の気温の上昇は人々のライフスタイルを変化させ、日常生活や伝統文化に対する影響を見逃すことはできない。我々世界冬の都市市長会の参加都市はこれら温暖化の深刻さを、地域住民に最も身近な行政機構の立場として、その声を世界に発信し訴えていく責務を有していることを参加都市の総意としてここに確認する。

 寒冷・多雪という気候特性を有する冬の都市では、特に冬の暖房や除排雪、融雪などに消費されるエネルギー量は多大であり、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を増加し、自ら温暖化を進めている自己矛盾を抱えている。つまり、冬の都市こそが国際社会の先頭に立って温暖化問題に取り組むべき立場であることを参加都市が改めてここに確認し、各都市が最大限の英知を結集して取組を行うことを、世界冬の都市市長会として、ここグリーンランド・ヌークで宣言する。

 国際社会では、2007年12月の気候変動枠組条約締結国会議(COP13)でポスト京都議定書の2013年以降の枠組みの検討が行われたほか、2008年の北海道洞爺湖サミットでも地球環境問題が主要テーマとなる予定である。我々自治体政府としても、国家レベルの動きを意識しつつ、世界冬の都市市長会が国際社会の先頭に立って取組を進めることを担保するため、以下について会員都市が全力で取り組むことを併せて確認する。

 先進会員都市の事例を参考に、会員都市では、二酸化炭素等の温室効果ガスの削減目標を設定するなど、温暖化対策の計画策定に努めること。

 冬の都市政府が自ら率先して省エネルギー運動・環境保全行動を展開し、地域住民の取組を促す役割を積極的に果たすこと。

 化石燃料からの脱却を図るため、バイオマスや自然エネルギーなどの再生可能なエネルギーの使用を積極的に進めること。

 世界冬の都市市長会の各会員都市は近隣の冬の都市に温暖化問題の重要性を啓発し、これを通じて地球環境問題に対する冬の都市のネットワークの拡大に努めること。

 以上の内容については、既に設置されている「冬の都市環境問題小委員会」および今回設置されるアンカレッジ市提案の小委員会で進展状況を確認する。

 

ヌーク宣言に署名をするヌーク市長(写真中央)と札幌市長(写真右)

ヌーク宣言に署名をするヌーク市長(写真中央)と札幌市長(写真右)

 

ヌーク宣言採択後に挨拶をするヌーク市長

ヌーク宣言採択後に挨拶をするヌーク市長

 

ヌーク宣言

「冬の都市環境問題小委員会」中間報告

 

「冬の都市環境問題小委員会」中間報告

 2006年に設立された「冬の都市環境問題小委員会」が、これまでの活動の中間報告を市長会議の中で行いました。
 これまでの調査結果として、(1)環境問題は会員都市にとって共通の重要課題であること、(2)異常気象への認識が高いことや、市民啓発活動を行っている都市が多いことから、地球温暖化に対する問題意識は自治体間で確実に広がっていること、(3)温暖化対策の計画を策定するなど、会員都市の取組は着実に進んでいること、などの報告がありました。

 

冬の都市環境問題小委員会からの中間報告

冬の都市環境問題小委員会からの中間報告

 

冬の都市フォーラム・冬の見本市

冬の都市フォーラム
 冬の都市フォーラムは、各界の専門家が集まり、各々の研究分野についての発表を行う場です。今回は、グリーンランド及びデンマーク、ノルウェー、アメリカ、日本から13人の専門家が集まり、グリーンランドや北極圏などの気候変動に関連したテーマについて講演が行われました。

 

 

冬の見本市
 冬の見本市は、会員都市の企業や団体を中心に、冬や雪にまつわる技術や製品などの展示を行うものです。今回は、グリーンランドの企業を中心に40ブースの出展があり、気候変動をテーマとした展示のほか、観光情報や伝統文化の紹介なども行われ、訪れた参加者の目を楽しませていました。

 

 

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